ピンク&ホワイトの造作家具

またひとつ造作家具の案件が無事に完了しました。
いつも完了するまでドキドキしているのですが、今回はいつも以上なのでした。

とある障がい者施設、グループホームにお住まいのF様の代理人の方からのご依頼でした。
何度か老人ホームなどに収納の仕事で伺ったことがありますが、どうしても安全性や機能面の効率のために、一般的に「施設」といわれる空間は、無機質で病院のようなイメージが強いように感じています。
色調もイエローベースで、使う材料もちょっと冷たい印象のあるものが多いですよね。

どうにも微妙なところなのかもしれませんが、もっと個性を出せたらいいのにな、、、。
いつか、私がシェアハウス的な老人ホームを作れるときが来たら、以前にもブログで書いたことがありますが、映画「メゾン・ド・ヒミコ」の中に出てきたような個々の好きな空間に作れることが理想です。笑。

今回はご本人の強い希望で、ピンクと白の家具にしたい、とのこと。
ピンクと白の組み合わせ、その配分が悩ましくもありますが、それ以前になぜピンクと白がいいのか、空間デザイン心理学®︎的にもヒアリングしたいところです。

どうしてそうしたいと思うの?
文字で書いて聞いてみたり、答えやすそうな質問で言葉にしてみたり、と何度かその理由を尋ねてみましたが、まだまだ関係性の日が浅い段階のときではなかなか表現してはいただけませんでした。泣!

どんなお部屋になるのか、友人に温かいタッチのイラストを書いてもらい、目で見てパッとわかりやすく選択ができるようにしました。

家具は今回もFarrow&Ballの配色で仕上げました。
使った色は「SHADOW WHITE #282」「RANGWALI #296」
空間の変化に敏感さを持っていらっしゃるように感じましたので、匂いが気にならない塗料であること、そして強めの配色の組み合わせでもまろやかにまとまるという点が決め手でした。
そして偶然にも、代理人の方が自宅で取り入れているほど好きでいらしたのですよね。

問題はその配分。。。もっとも悩んだポイントです。
サンプルでお持ちした配色の中で一番強めなピンク色を選ばれたので、あまり表面にありすぎるときつくなりすぎます。
縁取りや棚の背面に少し見えるぐらいがいいかな、でもインパクトも少しあると脳にも反応があるかも?と絵を書いては消して、を繰り返し、このような配分で納まりました。

デスク下にポイントで配分多めのピンクを置くことで、入り口から視線が奥に届き、空間に奥行きも生まれます。大きな開口のある窓側にアール形状を少し付けることで、ホールド感が高まり安全性も感じられるかな。

チェストは引き出しの奥にピンクのラインがうっすら見えるように。
この引き出しがとても軽く設計してくださったので、引き出しやすい!と喜ばれました。

ベッドで寝ている時も、自分の好きなものが眺められるようにクローゼットの側板にシェルフを設けて飾り棚に。
身長134cmのF様に合わせてハンガーパイプも低めに設定。造作家具のいいところです。

壁面にはたくさんの写真や案内が直接テープで貼ってあったので、マグネットコルクシートを用意することで貼ったり外したりがしやすくなり自由度を高めました。

ご本人はこの日をとても待ち望んでいらしたそう。(離れて老人ホームに暮らすお母様との面会よりも楽しみにされていらしたとか!)
とても気に入ってくださった様子で、後日、施設の方からも笑顔が増えました!と喜びのご連絡をいただきました。ホッと一安心。。。

言葉が完璧に通わずとも、目や表情から伝わる情報は多いものですよね。逆に言葉で誤魔化したりできないので、全身を研ぎ澄ませながら求められていることを感じよう、と思うのかもしれません。
代理人さんとのやりとり、ご本人とのやりとり、どれも何か大切なことを教えてもらえた現場なのでした。


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